女性ヘルスケア

ヘルスケア外来の特徴 その1QOL向上と予防医学の視点に立ったホルモン療法

女性は思春期から性成熟期、妊娠・出産、そして更年期、老年期とライフステージを通してホルモン分泌がダイナミックに変化し、それはしばしば体調や生活にも影響を与えます。あらゆる年代の女性特有のこころとからだの慢性的な症状、変動のある症状、健康上の不安などに対し、症状の軽減や不安の解消によって生活の質(Quality of life; QOL)の向上を目指すと同時に予防医学的観点に立った生活指導や治療を行っています。

  • 若い年代からの月経痛への適切な対処と治療は、将来の子宮内膜症や不妊症の予防につながります。
  • 量が多すぎる月経をコントロールして貧血や潜在的な鉄欠乏に対処することは、日常生活における活力とメンタルヘルスの維持につながります。
  • 更年期のトラブルをきっかけにライフスタイルをふりかえり健康チェックをすることから高齢期を心身健やかに過ごすためのヒントを得て、対策を講じることにつながります。

このように、生涯を通して、あるいは月毎に、心身機能に変化が絶えない女性にとっては、自分の「現在地」を客観的に見つめて「今の健康」を大切にすることが「将来の健康」につながることをご理解いただいて、十分な説明のもと科学的根拠に基づいた標準的治療、ホルモン療法を実践します。

ヘルスケア外来の特徴 その2漢方療法を積極的に導入

女性にあらわれやすいこころとからだの多彩な症状に対応し一人ひとりへのきめ細やかなヘルスケア診療を実践するために、患者様のご希望をお尋ねしながら、こころとからだの両方に働きかける漢方療法を日常診療に積極的に取り入れています。西洋医学的な見方で検査結果の異常がなく説明がつかない病態や西洋医学的な治療で改善しない症状、あるいはさまざまな事情で標準的治療やホルモン療法を行うことが難しい状態に対して、西洋医学とは異なる視点で病態を理解して、個々の症状や体質に合わせた漢方薬を処方します。漢方薬としては健康保険の適応となっているエキス製剤を用いています。

ヘルスケア外来の特徴 その3傾聴・対話と医療連携

当外来では正確な病態把握に基づいてホルモン療法・漢方療法・対症療法を適宜組み合わせて治療にあたります。その前提として、一人ひとりの不安やお困りごとを理解し「どう在りたいか、どうしたいか、どうなりたいか」をご一緒に考えていくために傾聴と対話を重視します。こころの症状や問題を抱えておられる患者様の診療も心療内科・精神科だけにお任せするのではなく、診療科や医療機関を越えた連携を大切にして、女性診療の専門的立場で可能な治療やサポートを行っています。産婦人科領域以外の基礎疾患を抱えておられる女性の種々の健康課題についても併科診療にて積極的に取り組んでいます。

ヘルスケア外来の対象疾患・病態・症状

  • 思春期の月経異常
  • 無月経、月経不順
  • 月経困難症(月経痛)、過多月経、子宮内膜症
  • 月経前症候群、月経前不快気分障害、基礎疾患の月経前増悪
  • さまざまな疾患に伴う月経異常
  • 更年期障害
  • 骨粗鬆症
  • 女性の心身症(からだの病気・症状・不具合の中で、その発症や経過に心理社会的要因やストレスが密接にかかわっているもの)
  • 婦人科がん治療中および治療後のヘルスケア(がん治療後遺症、メンタル不調、卵巣欠落症状、骨粗鬆症)
  • 性機能障害、骨盤痛、外陰部痛

「時間をかけてじっくり相談したい」「話をたくさん聞いてほしい」「いきなり産婦人科の診察を受けるのではなく、まず相談だけしたい」というご要望にお応えするために、当院では産科婦人科外来とは別枠で医師によるカウンセリング(自由診療・完全予約制)も行っています。(担当:江川美保)

産婦人科医師によるカウンセリングをご希望の方

※「産科婦人科ヘルスケア外来」と「女性のこころとからだの相談室・医師カウンセリング」の違いは、「女性のこころとからだの相談室」独自ホームページ内「よくあるご質問(FAQ)」に記載しています。

ヘルスケア外来(原則として予約制)の受診方法

当院産科婦人科に通院中(過去6か月以内)の方

  • 当院産科婦人科の診察時に担当医にご相談ください
  • 当院の再診予約受付(窓口)または予約センター(電話)にて予約してください

当院産科婦人科を受診したことがない方、もしくは受診から6か月以上経過している方

  • 当院産科婦人科の新患外来(月~金)をまず受診してください(地域連携室を通して予約が必要です)。新患外来にて必要な診察や検査を行い、次の診察としてヘルスケア外来の予約をします。初診時の内診など、診察や検査の一部を延期なさりたい方は率直に担当医にご相談ください。ただし、内診・子宮がん検診・経腟超音波検査などを初診時に実施しておきますと、ヘルスケア外来ではお話を聴くことや病状・治療の説明により長い時間を使うことができるというメリットがあります。
  • 江川美保医師の診察を初診から希望される場合は、江川美保医師あての紹介状で地域連携室を通して予約をしてください(水曜日 午後 完全予約制)。

ヘルスケア外来担当医

江川 美保(えがわ みほ) 毎週火曜日 午前・午後
池田 裕美枝(いけだ ゆみえ) 毎週木曜日 午後
奥宮 明日香(おくのみや あすか) 第1木曜日 午前 および第4木曜日 午前
大須賀 拓真(おおすが たくま) 第2木曜日 午前

ヘルスケア外来専用のチェックシート(問診票)について

月経随伴症状(月経期間中や月経前の時期に繰り返す痛みや不快な症状)や更年期障害においては、こころとからだにあらわれる症状は種類も程度もさまざまであり個人差もあります。当外来では患者様の悩みや病状を把握するために、症状について詳しくお尋ねします。またそれらの治療法として女性ホルモン製剤を用いたホルモン療法が適切で安全であるかどうかを判断するために、過去の病歴や体質にかかわることもお尋ねします。

これら確認すべき項目を漏れなく効率的に質問するために、3種類のチェックシート(問診票)を用意しています。下記のご自身に当てはまるチェックシートを事前にダウンロードしてご自宅などでゆっくりご記入なさり診察当日ご持参くださいますと、診察時の手続きがよりスムーズになります。もちろん当科外来受付(3CDコーナー)にも同じ用紙がありますのでご来院時に待合室でご記入いただいても結構です。

チェックシートの選び方

  ご相談の内容 チェックシート
1 月経がなくなった、更年期症状がある ①+③
2 月経痛(生理痛)がひどい ②+③
3 月経前の症状がつらい、月経の周期で繰り返す症状がある ②+③
4 月経不順である
5 避妊の相談をしたい
6 その他の相談をしたい 診察室で具体的にお尋ねしますのでチェックシートは不要です

チェックシート

※チェックシート③へのご記載をお願いすることはホルモン療法をお勧めしているということではありません。治療法は各薬剤・用法の期待される効用や副作用などを説明し患者様のご希望も聞きながらご提案します。

京都大学医学部婦人科学産科学教室