生殖・妊よう

近年、高度生殖補助医療(ART)を受ける方は増加しており、本邦では出生する児のおよそ9人に1人がARTによる出生児となっています。ARTはもはや限られた方のための特別な医療ではなく、多くの方にとって身近な選択肢となりつつあります。高度生殖医療センターでは、精子調整、採卵、胚培養、胚移植など、人工授精やARTに関わる診療を集約し、医師、看護師、胚培養士をはじめとする多職種が連携しながら、検査・治療を行っています。患者さん一人ひとりの背景や希望に寄り添いながら、安心・安全な生殖医療の提供に努めています。

診療内容

一般的に、初診時には不妊原因の検索を目的としたスクリーニング検査を行い、その結果や患者さんの背景に応じて、タイミング療法や人工授精などの一般不妊治療から段階的に治療を進めていきます。

また、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など、妊娠成立に影響する婦人科疾患を合併している場合には、腹腔鏡手術や開腹手術を含めた外科的治療も行っています。

さらに、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)、胚移植による妊娠成立を目指す高度生殖補助医療(ART)にも対応しており、毎年安定した治療周期数を維持しています。

当院は、「高度医療を提供する地域の中核病院」としての大学病院の特色から、不妊治療や妊娠中に全身管理を要する基礎疾患を背景にもつ患者さんも多く受診されます。院内の多くの診療科や専門家と連携することで、合併症を有する方や難治症例にも柔軟に対応できる体制を整えています。

また、がん治療前の妊孕性温存医療にも積極的に取り組んでいます。小児からAYA世代を含む幅広い年代に対して、卵子凍結や卵巣組織凍結を中心とした妊孕性温存療法を提供しており、院内外の診療科と連携しながら、患者さん一人ひとりの治療背景や将来の妊娠希望に応じた支援を行っています。

図:当院の高度生殖医療件数

特色ある取り組み

1) 着床前診断(PGT-A/SR)

通常の体外受精や胚移植で妊娠が成立しない場合に、受精卵の一部から細胞を採取して染色体の数的異常や構造異常の有無を確認する「着床前診断(PGT-A/SR)」に積極的に取り組んでいます。

2) 着床前診断(PGT-M)

ご本人および家系内に重篤な遺伝性疾患を保有する患者さんに対して、特定の遺伝性疾患の有無を検出する「着床前診断(PGT-M)」について、日本産科婦人科学会が認定する実施施設であり(2026年5月時点39施設)、遺伝子診療部での十分な遺伝カウンセリングのもとに実施しています。

3) 自己末梢血リンパ球(PBMC)療法

不妊症の原因の一つである「難治性着床不全」の患者さんに対して、再生医療法に則り、ご自身の血液から採取した自己末梢血リンパ球 (PBMC)を胚移植前の子宮内に投与する免疫治療が実施可能です。

末梢血リンパ球(PBMC)投与イメージ

4)小児・若年がん患者に対するがん生殖医療

小児・若年がん患者さんに対して、がん治療前もしくは治療寛解期に妊孕性温存目的の卵子・卵巣組織・精子凍結保存に積極的に取り組んでいます。院内のみならず、京都府内のがん治療施設と京都・がんと生殖医療ネットワーク( KOF-net)を通じて迅速に連携しています。

京都大学医学部婦人科学産科学教室