生殖・妊よう

近年、高度生殖補助医療(ART)を受ける方は増加し、本邦で出生する児の14人に1人は体外受精児です。もはや特別な治療ではなくなりつつあります。体外受精の過程で実施する採卵や胚培養、胚移植などを集約して、高度生殖医療センターにおいて医師や看護師、胚培養士などスタッフが協力し、高度生殖補助医療に関わる検査や治療を行なっています。患者さん一人ひとりに対応した治療を行い、安全な生殖医療の提供に努めています。

診療内容

一般的に、初めて受診された場合には原因検索を目的としたスクリーニング検査を行い、タイミング療法、また人工授精などの一般不妊治療から段階的に治療を開始します。また、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症などの婦人科疾患を合併していることで妊娠に至らない方に対しては、腹腔鏡手術や開腹手術を含めた手術療法を行っています。さらに、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行い胚移植によって妊娠成立を目指す高度生殖補助医療(ART)も行なっており、毎年安定した治療周期数があります。胚移植あたりの妊娠率は31-35%で推移しております。

当院は「高度医療を提供する地域の中核病院」という大学病院の特色から、不妊治療や妊娠中に全身管理を必要とする基礎疾患を背景にもつ方が多く受診されます。大学病院内で多くの診療科や専門家と連携をとることで、困難なケースにも柔軟に対応することができます。また、がん治療前の妊孕性温存療法として、卵子凍結や卵巣凍結に対応しています。

特色ある取り組み

1) 着床前診断(PGT-A/SR)

通常の体外受精や胚移植で妊娠が成立しない場合に、受精卵の一部から細胞を採取して染色体の数的異常や構造異常の有無を確認する「着床前診断(PGT-A/SR)」に積極的に取り組んでいます。

2) 着床前診断(PGT-M)

ご本人および家系内に重篤な遺伝性疾患を保有する患者さんに対して、特定の遺伝性疾患の有無を検出する「着床前診断(PGT-M)」について、日本産科婦人科学会が認定する実施施設であり(2023年9月時点36施設)、遺伝子診療部での十分な遺伝カウンセリングのもとに実施しています。

3) 自己末梢血リンパ球(PBMC)療法

不妊症の原因の一つである「難治性着床不全」の患者さんに対して、再生医療法に則り、ご自身の血液から採取した自己末梢血リンパ球 (PBMC)を胚移植前の子宮内に投与する免疫治療が実施可能です。

末梢血リンパ球(PBMC)投与イメージ

4)小児・若年がん患者に対するがん生殖医療

小児・若年がん患者さんに対して、がん治療前もしくは治療寛解期に妊孕性温存目的の卵子・卵巣組織・精子凍結保存に積極的に取り組んでいます。院内のみならず、京都府内のがん治療施設と京都・がんと生殖医療ネットワーク( KOF-net)を通じて迅速に連携しています。

京都大学医学部婦人科学産科学教室