婦人科腫瘍研究室

研究内容

婦人科悪性腫瘍全般の病態解明・新たな治療戦略確立を目指して以下の取り組みを進めています。

腫瘍免疫

婦人科腫瘍に対する免疫療法の確立;臨床に応用可能な腫瘍免疫学の確立を目指して、各種婦人科癌で免疫学的全体像の把握、免疫学的予後因子の探索・確立、免疫抑制因子の抗体による制御といった多方面からの婦人科癌の研究を行なっています。特にB細胞性免疫応答や3次リンパ組織(TLS)に注目した研究や人工知能(AI)を用いた新たな免疫評価法の確立、癌肉腫における癌細胞と肉腫細胞との免疫応答の違いを解明することを目指しています。

がんヘルスケア

AIを用いたアプリを使い、婦人科がん患者のヘルスケアを行いながら、がん患者の食生活(栄養組成)、運動消費量、血圧、脈拍、体重、体脂肪率、心拍変動、発声などのライフログを集めてがんとの関係を調べています。ライフログによるQOLの可視化、がん治療中のアプリ開発、ビックデータを用いたリアルワールド解析を行っています。この研究は、がん患者のQOL改善による患者の満足度を上げ、生活習慣改善による新しい治療戦略の提言を目指します。

がん代謝

がんと代謝とのかかわりを探求することで新規治療法を探索しています。

  1. 卵巣明細胞癌癌における代謝異常
    明細胞癌は子宮内膜症性嚢胞という鉄が豊富な酸化ストレス環境の中から発生する中で、グルタチオン代謝や糖代謝、ミトコンドリア代謝に異常があることを明らかにしてきました。これらの代謝異常は明細胞癌のストレス耐性の大きく関わることがわかってきましたが、現在、鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスや低酸素の役割を探求しています。
  2. 脂肪酸代謝と癌
    高脂肪食が癌の悪性性質に与える影響について、長鎖脂肪酸をキー分子として詳細なメカニズムの解明を試みています。特に長鎖脂肪酸が直接タンパク質に付加する、パルミトイル化と呼ばれる翻訳後修飾の観点から解明を目指しています。癌患者に対するエビデンスのある食事療法を世界で初めて提唱することを目標に、日々研究に取り組んでいます。

    卵巣癌細胞株をマウスに接種し、食事内容を変えて腫瘍が大きくなる速度が変わるか観察した実験結果。
    高脂肪食を与えられたマウスにおいて、明らかに腫瘍の増殖速度が亢進している。(*p<0.05)

バイオインフォマティクスと人工知能(AI)による婦人科がん解析

分子標的薬の時代となり、ますます網羅的遺伝子発現、ゲノムやエピゲノムを解析する重要性が増しています。次世代シークエンサーの発展により、婦人科がんの網羅的遺伝子発現解析やゲノム解析を行ってきました。特に現在は子宮内膜や子宮内膜症といった婦人科腫瘍が発生する組織の遺伝子解析をこれまでより詳細に行い、がんが発生する過程を探索しています。さらにシングルセル解析の技術の革新でより高解像度に卵巣がんの腫瘍微小環境を含めた治療反応性や予後に関連する因子を探索する研究を行っています。

また婦人科がんの実臨床においては放射線診断画像、病理組織診画像など様々なモダリティでの画像診断を行い最適な治療法を決定しています。特に医療画像と臨床情報から、深層学習技術を用いて治療効果や予後予測につなげる解析を行い、最適な治療選択に関連する因子を探索しています。

バイオインフォマティクスと人工知能の技術を融合することで、既存の知見に囚われない新たな分類法の構築や、治療標的の探索、有効性/獲得耐性に関わるバイオマーカーの探索などを行い、新しい診断技術や、治療法の開発を目指して研究を行っています。

活動風景

*腫瘍研は、Webカンファレンスにて研究報告や抄読会を行っています!

京都大学医学部婦人科学産科学教室