卵巣奇形腫を伴う抗NMDA抗体脳炎における卵巣奇形腫の手術時期および術式と脳炎の短期的転帰との関連をみる調査(多施設共同研究)

【婦人科腫瘍研究】

このたび、下記の医学系研究を、日本産科婦人科学会倫理委員会臨床研究審査小委員会の承認ならびに理事長の許可のもと、倫理指針および法令を遵守して実施しますので、ご協力をお願いいたします。この研究を実施することによる、患者さんへの新たな負担は一切ありません。また患者さんのプライバシー保護については最善を尽くします。 本研究への協力を望まれない患者さんは、その旨を診療を受けた施設までお申し出下さいますようお願いいたします。

対象となる方

2007 年 1 月 1 日より 2017 年 12 月 31 日までの間に、卵巣奇形腫を伴う抗 NMDA 受容体抗体脳炎の治療のため入院し、卵巣奇形腫の手術を受けた方

研究課題名

卵巣奇形腫を伴う抗 NMDA 受容体抗体脳炎における卵巣奇形腫の手術時期および術式と脳炎の短期的転帰との関連をみる調査

研究実施機関

日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会 「抗NMDA受容体抗体脳炎に関する小委員会」
熊本大学大学院生命科学研究部 片渕 秀隆(婦人科腫瘍委員会 前委員長)
新潟大学医学部 榎本 隆之(婦人科腫瘍委員会 委員長)
東北大学大学院医学系研究科 八重樫 伸生(婦人科腫瘍委員会 副委員長)
熊本大学大学院生命科学研究部 田代 浩徳 (研究責任者)
福岡大学医学部 宮本新吾
京都大学大学院医学研究科 万代 昌紀
国立病院機構災害医療センター 椙田 賢司
熊本大学医学部附属病院 坂口 勲

本研究の意義、目的、方法

若年女性にみられることの多い抗 N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体(R)抗体脳炎は、NMDA 受容体に自己抗体ができることよる急性型の脳炎で、卵巣奇形腫との関連が指摘されています。本疾患は、感冒様症状の後、精神症状で初発し、意識障害、痙攣、不随意運動や自律神経症状を呈し、呼吸ができなくなり、人 工呼吸器による管理を受けることも多く、治療が効きづらく病状が長期におよび、死に至ることもある疾患です。卵巣奇形腫を合併する場合には、発症早期に卵巣奇形腫に対する手術を行うことで回復が早く見込めるのではないかと言われています。しかし、卵巣奇形腫の手術には、開腹手術や腹腔鏡による方法、また、卵巣全体あるいは奇形腫の腫瘤だけを摘出する方法がありますが、どのような手術方法が症状改善に影響するかは、はっきりとはわかっていません。若年の女性では、正常の卵巣をなるべく残すということは将来の 妊娠する力(妊孕能)に影響しますが、一方で小さな奇形腫が残ってしまうと脳炎症状が改善しない可能性 もあります。そこで、脳炎発症から卵巣奇形腫の手術に至った時期や手術の方法によって、短期的に脳炎の 症状改善に差がみられたかどうかを後ろ向きに調査し検討することで、卵巣奇形腫に対する手術方法の治療 指針を作成していくことを目的としています。
平成 28 年度に全国の日本産科婦人科学会婦人科腫瘍登録施設ならびにこれまでに卵巣奇形腫を合併する 抗 NMDAR 抗体脳炎に関する論文または学会発表を行っている産婦人科の施設を対象に、アンケートを実施したところ、88 施設で約 180 名の患者様が本疾患により卵巣奇形腫の手術が行われたということがわかりました。この調査では、どのような年代の方か、診断や手術がどのように行われたのか、などについて、該当する患者様の人数を尋ねる形で調査が行われました。この調査結果では、若い方に多く、妊娠中の方もおられ ました。卵巣奇形腫は片側だけでなく両側の卵巣にみられた方もありました。そして、奇形腫に対する手術 の方法が異なること、手術後に症状の改善がみられた方やみられなかった方、また、亡くなられた方もおられました。そこで、今回は、前回の調査で治療にあたられた産婦人科の 88 施設の担当医師に、患者様の人数 だけではなく、カルテをもとに、患者様毎に、診断された方法、抗 NMDAR脳炎の症状の程度、卵巣奇形腫の 手術時期、手術の方法、術後の症状の改善度合いなどを回答していただき、手術の時期や方法によって、脳炎の症状改善に差があるのかどうかを検討します。なお、調査では、患者様の個人が特定されるような情報 は治療にあたられた施設以外ではわからないように十分に配慮されています。

協力をお願いする内容

調査は、過去の診療記録(カルテ)をもとに行うために、患者様に負担が生じることは一切ありません。今回、診療記録(カルテ)・臨床検査結果(血液 髄液)・手術記録・病理検査結果を調べさせていただく内容は下記の通りです。

  • 抗NMDAR抗体脳炎に関する項目: ①脳炎発症時の年齢、②抗体陽性となった検査材料、③抗体検査の種類、④脳炎の治療、⑤発症後から脳炎の確定診断までの期間
  • 卵巣奇形腫に関する項目:①発症後奇形腫の手術までの期間、②内科的治療内容、③手術の目的、④奇形腫手術時の年齢、⑤妊産回数、⑥脳炎発症時の妊娠の有無、妊娠週数、妊娠の転帰、⑦奇形腫発生部位、⑨嚢腫の数、⑩嚢腫の最大長径、⑪奇形腫の組織型(良悪性)、⑫神経成分の有無
  • 卵巣奇形腫の手術に関する項目:①手術時のパフォーマンス ステータス(PS)、②術前 ICU 管理の有無、③手術時意識レベル、④手術時の呼吸状態、⑤手術時の痙攣・異常行動、⑥手術時の精神症状、⑦手術時のその他の症状、⑧卵巣奇形腫に対する術式1(開腹・腹腔鏡)、⑨術式2(片側・両側)、⑩術式3(嚢腫核出術・卵巣/付属器切除)、⑪術式4(両側性の場合の術式)、⑫術式5(その他) IV. 奇形腫の手術による状態改善に関する項目:①術後の経過観察期間、②転帰(全経過)、③術後の意識障害の改善、④術後の呼吸障害の改善、⑤術後の痙攣・異常行動の改善、⑥術後 の精神症状の改善、⑦術後日常生活可能となるまでの期間、⑧術後1ヶ月時のPS、⑨術後1ヶ月時のICU管理、⑩術後1ヶ月時の改善度、⑪その他(評価可能な施設において術後3ヶ 月後、1 年後の状態)、⑫新たな奇形腫・残存腫瘍・再発腫瘍、⑬死亡例の場合、死亡の時期と死因

本研究の実施期間

研究実施許可日から2019年3月31日

プライバシーの保護について

本研究で取り扱う患者さんの情報は個人情報をすべて削除し、第3者にはどなたのものか一切わからない形で参加施設から提供され、使用します。患者さんの情報と個人情報を連結させることはありません。

お問い合わせ

本研究に関する質問や確認のご依頼は、下記へご連絡下さい。
また本研究の対象となる方またはその代理人(ご本人より本研究に関する委任を受けた方など)より、【情報の利用や他の研究機関への提供】の停止を求める旨のお申し出があった場合は、適切な措置を行いますので、その場合は診療のために受診された施設へのご連絡をお願いいたします。

お問い合わせ先

熊本大学大学院生命科学研究部/熊本大学医学部保健学科 教授 田代 浩徳
TEL: 096-373-5269/096-373-5461 / FAX: 096-363-5161
Email: htashiro★kumamoto-u.ac.jp (★を@に置き換えください)
日本産科婦人科学会事務局
TEL: 03-5524-6900 / FAX: 03-5524-6911
Email: nissanfu★jsog.or.jp (★を@に置き換えください)

京都大学医学部婦人科学産科学教室