教室員による活動報告

東山 希実

第77回学術講演会 JSOG Congress Award受賞報告

京都大学医学部附属病院 産科婦人科 医員

東山 希実

受賞報告

[発表タイトル]
HRV Wellness Score: A Rapid and Non-Invasive QOL Indicator for Gynecological Cancer Supportive Care Using Heart Rate Variability

[研究内容]
近年、がん治療は長期的な外来管理へと移行しており、治療中の患者さんのQOL(生活の質)をいかに維持・向上させるかが重要な課題となっています。なかでも、疲労感、抑うつ、不安といった精神的症状はQOL低下と強く関連するにもかかわらず、日常診療の中では見過ごされることが少なくありません。本研究では、スマートフォンを用いて1分間で簡便に計測可能な心拍変動(HRV)に着目し、HRVの各パラメータからがん患者さんのQOLを非侵襲的に推定するHRV Wellness Scoreを開発しました。3,800件以上のHRVデータと800件以上のPRO(患者報告アウトカム)データを用いて、多施設共同でアルゴリズムを構築しています。このHRV Wellness Scoreは、「疲労」「抑うつ」「しびれ」などQOL低下に関連する症状を反映し、QOLの低下をリアルタイムで検知可能な指標です。患者さん・医療者双方にとって負担の少ない、持続的なQOLモニタリング手段である可能性があります。


[感想・抱負]
本研究は、多くの患者さんおよび医療機関の協力によって成り立っています。ご参加いただいた皆様に深く感謝申し上げます。現在は北野病院、岩手医大、近畿大学、大阪赤十字病院を含む多施設での検証を終え、JGOG(婦人科悪性腫瘍研究機構)での全国規模での臨床研究を開始しております。今後は、心拍変動を活用したQOL評価システムをさらに発展させ、がん患者さんの生活の質を支える医療の一助となることを目指します。

2025/06/06

京都大学医学部婦人科学産科学教室